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7ステップ・プランニング

[ 資料 ] 掲載 2006/11/04 更新 2006/11/05

7ステップ・プランニング
誰が?何を?いつ?どこで?何のために?何を?どのように?
ジェーン・ベラ著

成人学習の企画に最も役に立つのが,7ステップ・プランニングです.7ステップ・プランニングでは,まず,誰が学習の対象者なのかに注目します.成人学習の対象者に関する情報をできるだけ多く収集することにより,質問事項をつくる上で学習者に適した内容がなにかをつかむことができます.これは,学習者中心型成人教育といい,学習者に関することから決めていきます.中でも学習者の人数は,必ず設定しなければならない重要事項です.指導者モデルのアプローチにしたがうと,有意義な内容の質のよい成人教育に適した学習者の人数は12人になります.実際に多くの研究において,学習者の人数を設定することが学習の質を決めると言われています.

なぜ?というのが次の質問です.この教育機会を必要としている実情とはなにか?ということです.この質問への答えを見つけるよい切り口は,「私たちが必要としているものは何か」を考えることです.この質問への答えが見つかったとき,提供する教育が参加者の本来のニーズに合っていることの裏付けになります.なぜ?という質問の答えによっては,教育の内容と参加者のニーズが合わないことも起こりかねません.したがって,だれが?となぜ?という問いから導かれる答えは,常に合致していなければなりません.

次に私たちが答える質問がいつ?です.この教育に必要な時間はどれくらいなのか?ということです.二日かかることを一日ですることができないように,時間の設定は極めて重要な事柄です.どれくらいの時間の確保が可能なのかがわかるまで,なにをどう教育するかを検討することはできません.従来の教育では,まずなにを?の問いから取り組んできたため,教育内容が初めに決定され,その内容を与えられた時間内で“埋め合わせる”方法がとられてきました.しかし質のよい成人学習教育を目指すには,不足部分を何かで“埋め合わせる”ことはできません.

次の質問は,どこで?です.学習の場所の設定は,しばしば学習過程で何ができるかを左右します.小グループに分かれて作業ができるように3つから4つのテーブルがある居心地のいい部屋を確保するようにします.部屋の照明や換気,気温など,すべてが学習過程の要素となります.実際にその場所を使用する前に,必ず下調べをすることも大切です.学習者の人数を設定するように,学習過程の場所(環境)の質も維持しなければなりません.

なんのために?は,達成目標をもとに答えを出す質問です.設定した目標にそった教育をすることが,質のよい教育につながります.例えば,「この講座が終了するまでに,・・・・・・を習得することを目標とし,達成可能な目標設定をする」ということです.

なんのためにという質問に対する答えは,一連の動作(動詞)を示します.例えば,「成人学習の主な四要素を考察し,学習講座の企画を実行し,ベレンキー他著の”Women’s Ways of Knowing(女性の知識習得法)”を読み,コミュニティーのテーマを特定し,成功するコミュニケーションに必要な主要素を認識し,7ステップ・プランニングを使って成人学習講座を企画し,パウロ・フレイレの講座テープを聞き,”Dead Poets Society(邦題「今を生きる」)”という映画を観て,学習企画の中で認知的/感情的/精神運動的要素を含む惨事(クリティカル・インシデント)の打開策を練る」のようにあらわされます.

なにを?に対する答えは,講座の内容を指し,連なった名詞を使ってあらわします.例えば,「学習の認知的/感情的/精神運動的要素,一方的に知識を植え付ける従来の教育方法(バンキング・アプローチ)について考えるための”Dead Poets Society(邦題「今を生きる」)”鑑賞, パウロ・フレイレの主要テーマ,7ステップ・プランニング,コミュニケーションの基本,議論を活発化するテーマつくり,Women’s Ways of Knowing(女性の知識習得法)における四段階学習,学習計画の基本,成人の習得過程:主四要素」のように示されます.

目的と内容の関係性がわかってもらえたでしょうか?この二つの要素は,直接的な相互関係にあります.

最後の質問は,どのように?です.これには,すべての学習作業(タスク),学習教材,学習の進み具合をみる(評価)作業が含まれます.達成目標が明確に設定され,内容がきちんと理解されたら,学習作業の準備は完了です.例えば,
 Women’s Ways of Knowingの序文を読む
 この本に示されている知識習得に関する各ステップの名称をあげる
 これらのステップの中からひとつを選び,それについて感想を述べる
 “沈黙”という段階にいる人に必要な方法をひとつあげる

このように,これらの小グループ作業または個別作業は,学習者が今読んだものを使って,考察や分析をしたり,学習者の実生活に照らし合わせ行動計画を作成するなど,学習者に作業のとっかかりを与えます.学習教材には,ある本の特定の章を使ったり,自由回答式質問や配布資料または冊子を使用します.この作業を通じて,対象者は学習内容を習得し,目標の達成に取り組みます.

次に,いったい学習者はどのようにして自分の知識の習得を確認することができるのでしょうか?この段階には,さらに評価のための学習作業が含まれます.例えば,友人に教材に使用した本を勧める手紙を書き,その中であなたが同意した内容と同意できない内容をその友人に伝え,その本が教育者としてのあなたにどう役立ったのかを説明することが,評価のための学習作業になります.

成人学習者がこの作業をやり遂げたとき,知識の習得を自己確認できるのです.

機関紙「Convergence」27巻1号(1997年)より抜粋
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