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2005年7月ワークショップに向けて

[ 資料 ] 掲載 2006/11/04 更新 2006/11/05

※2005/07ワークショップ資料

皆様

皆様,いかがお過ごしでしょうか.新年を迎えてしばらく時間が経ちましたが,2005年を女性労働者にとってすばらしい進歩のある年にするよう,ご一緒にがんばりたいと考えております.

さて,第2回国際ワークショップを7月22日(金)から24日(日)に東京で開催すべく準備をすすめておりますが,多くの方々からたくさんの質問をいただいております.特に,「教育教材(マニュアル)」とはどういうものなのか,どのような人を対象とした教育教材なのかなどについて,詳しく知りたいという内容の質問が多かったです.そこで今回,このプロジェクトの概要を皆様にご説明し,今後何をどう進めていこうとしているのか,プロジェクトの具体的な目標と作業過程をきちんと明確にしたいと考えました.また,その他にもいろいろとご質問がありましたので,それにもできるだけお答えしたいと考えてました.7月に開催する第2回ワークショップの準備を一緒に進めていくためにも,私たちの出発点を明示できたらと願っています.

私たち参加者全員が登録しているML上で,みんなが自由に意見を表明し,提案をし,感想を書く事ができれば,私達の相互理解を深めることができると考えております.私達はこのプロジェクトを進行する際に,ワークショップに参加した方々はもちろんのこと,できるだけ多くの女性労働者にとっても,重要で意味のある内容になるようにと常に心がけてきました.言語の違いがコミュニケーションを難しくしていますが,私たちにはお互いに学べることがたくさんあります.困難な道のりですが,言葉の壁を越え,これからもお互いに助け合い,確固たる決意でもってこの困難を乗り切りましょう.

プロジェクトの概要

○女性労働者ネットワークプロジェクトの長期的目標:

1.参加者全員にとって利益となる実用的なプロジェクト(今回の場合,教育プログラムの実現化)に一緒に取り組むことを通して,国際的な女性労働者ネットワークを構築し強化すること.

2.ネットワークを構成する個々の組織団体自体を強化すること.
私たちは,世界中の女性の生活向上を目指して,最終的には女性労働者組織の真に国際的なネットワークを築くことを目的としています.しかしながら,このネットワークが持つであろう影響力は,ネットワークを構成する団体がどのくらいの力を発揮できるかによって規定されてしまいます.日本の女性労働者団体のほとんどは,女性ユニオン東京がデトロイトでのワークショップで発表した,自己評価に言及されている問題と同様の問題を抱えています.皆さんもご自身の経験を通じて,よくご存知の通りです.このプロジェクトに関わっているほとんどの組織団体が,比較的新しく,資金・人材・教育資源に乏しく,その多くの団体は,メンバーが自分自身の問題を解決した後退会してしまうという困難に直面しています.計3回にわたる日米ワークショップでは,このような問題に焦点をあて,参加者全員が一緒に問題に取り組んで解決のための方策を考え出すことをめざしています.今回,日米共催プロジェクトを助成する機関に,ワークショップ開催のための助成金を申請したため,「日米」女性労働者ワークショップと称されています.しかしながら,私たちは世界中の女性労働者が抱える問題や活動に深い関心を寄せており,すべての国と地域の女性の参加を歓迎し,アジアの国々や世界中の国々からの参加を募るために更なる助成金獲得を計画しております.今回獲得した助成金によってこのプロジェクトを実現させることができましたが,このプロジェクト終了後も,ワークショップ参加者が,ここで始まった作業を継続し拡大していってくださることを願っています.自分自身の組織を強化する方法を探る共同作業を通して,多くの組織の間に強いつながりを築くことができます.さらにこれが,国際女性労働者ネットワークの構築へと発展してゆく核となることでしょう.

○ワークショップの具体的な企画内容
このプロジェクトは,多くのグループが,メンバーを教育するプログラムづくりに共に取り組むことによって,女性労働者のネットワークを構築し,それを強化することを目的としています.メンバー教育プログラムとは,すべての運動団体が必要としているもっとも基本的な資源のひとつであり,女性や一般の働く人たちの生活向上に取り組んでいる,すべての組織が共有できるプログラムです.

各メンバーが活動的で連帯感がありエンパワーされた組合員となるために,必要な基礎的スキルや知識を提供する教育プログラムを,私達は作成したいと考えております.この教育プログラムは,自分たちの持つ権利とは何か,どのように自分自身を守るのかについて,組合員が確実に自分自身の知識として身に付けることができるように構成されています.

ここで注意していただきたいのですが,私達は第3回ワークショップ終了時までに,完全なフル・セットの教育マニュアルを作成しようとしているわけではありません.皆様が多くの責任を抱え,多忙な女性労働者であることを十分承知しております.また,このような教育マニュアルづくりは初めて,という方が大半でしょう.そこで今回の教育マニュアルづくりでは,学習テーマを3つにしぼって草案を作成することにしました.ですから,十分に達成可能な課題設定になっていると考えています.そして,第3回のワークショップ終了後に,皆さんとご一緒にこの3つの学習テーマの教材を完成させたいと考えております.

これらを完成させた後にも,このネットワークを活用して,別のテーマについての教育マニュアルをご一緒に開発していきたいと願っております.

特に多く寄せられた質問について

○なぜ私たちの組合・組織が,スキル訓練を提供する必要があるのでしょうか?
真に民主的である組合は,メンバーが組合の活動と運営に,積極的かつ意義ある形で参加できるよう配慮しなければなりません.さらに,これまでの歴史が示すように,メンバーが組合運営と問題解決において積極的な役割を果たすとき,組合は本来の力を発揮します.しかし,メンバーが積極的かつ意義ある参加をするためには,組合運営と組合の基本理念を担うために必要な,技能と知識を獲得する必要があります.従って,真に民主的な組合が負っている基本的責務のひとつは,組合活動に必要な基本的スキル(組織化や交渉の進め方),基礎知識(労働者の権利や労働法),組合の基本理念(労組の持つ力とは何か,なぜ連帯が重要なのかなどの理解)に関してメンバーを訓練することなのです.世界の中で成功した労働者組織はどの組織でも,メンバーに自分たちの権利とは何かを教え,メンバーが自分を守るために必要なスキルを指導するための教育プログラムを開発しています.

○教育マニュアルとは何ですか?
教育マニュアルとは,教育プログラムにおける基本的な道具です.教育マニュアルは,手短に言えば,必要な知識を伝達し重要なスキルを養成するために使われる,いろいろなアイディア,活動,資料を集めた集合体といえます.通常教育マニュアルには,双方向的な学習活動に役立つ情報や,各学習活動に必要な資料のリストがあり,“指導者”が各テーマの基本的概念を説明できるようにするための指導要領もあります.

○メンバー教育プログラムには,どのようなスキルまたは学習テーマが含まれるのでしょうか?
ユニオンメンバーのための教育マニュアルは,まず新会員向けに会員として必要な基本的スキルを提供することから始めるべきです.それには,例えば次のような学習テーマが含まれます.
・ 組織化に関する基本的スキル(すべての組合員が,組合員同士で組織化要員となれるためのスキル)
・ 団体交渉に関する基本的スキル
・ 女性の権利/労働者の権利
・ フェミニズムの基本理念
・ 労働組合入門:労組とは何か?労組は組合員のために何ができるか?なぜ連帯が重要なのか?
・ 基本的なコミュニケーションスキル

上記に続く上級編では,ベテラン向けのより高度なスキルが含まれます.例えば,
・ 資金調達
・ 会員の保持
・ コミュニティとの提携の構築
・ ネットワークの構築
・ メディアへの働きかけ
・ 高度な団体交渉スキル
・ 政治的な活動や法律制定に向けた活動
・ 公的キャンペーンの企画
・ 労働法

○そのような資料や教育テーマの具体的な見本はありますか?
教育マニュアルの見本をいくつか収集してありますので,インターネットのオンライン上で公開します.現在,それらすべてが英語で書かれていますが,テス・アーウィングさんから提供していただいた資料一式は日本語に翻訳されています.ご存知のように,翻訳料が非常に高いため,現在ひとつしか翻訳する予算がありません.しかしながら,ハイジと私は,さらに助成金申請企画書を二本書いて申請するなど,翻訳料を確保するための努力をしております.

○私たちの教育プログラムは,どうしたらこれまでの標準的・従来的な教育プログラムと違ったものになるのでしょうか?
教育プログラムの作成においては,「アクティブ・ラーニング(主体的学習)」を基本にしたいと思います.ブラジルの教育学者であるPaulo Friere (パウロ フレイレ)の功績に感謝するところですが,教育者の多くが支持している,ファシリテイター(進行役・まとめ役)だけでなく,研修を受ける人自身のアイディアやエネルギーを重視した,上下関係がなく創造性に基づく教育方法です.このプロジェクトにおいて,私たちは一方的に教え込むのではなく,研修を受ける人が面白く感じ,エンパワーされるような教育方法の開発に取り組んでいきます.さらに,研修を受け終わった人すべてが,新たに加わった会員を指導できるような明確な指導要領と概念が示され,きちんと構成されたマニュアル作りを目指しています.言い換えれば,今日研修生だった人が明日には指導者になれるということです.このように,全員が教育するスキルを習得できるので,だれでもが新会員を教育する役割を分担することができるわけです.

○教育マニュアル作成は,果てしない作業のように思われますが,どのように進めていくのでしょうか?
先に述べたように,これから開催される2回のワークショップで完全なマニュアルを作成するわけではありません.そのようなことは不可能に近いでしょう.今後の2回のワークショップでは,マニュアル作成に着手することを目標とします.革新的な教育者であるテス・アーウィング,エミリー・ローゼンバーグ,メイベル・オーという専門家の助けを借りて,まずは教育プログラムの基礎的部分である,3つの学習テーマを設定して,マニュアルを作成したいと考えています.いずれ私たちのネットワークが拡がっていく過程で,新しい考えや異なった意見を取り入れながら,時間をかけて教育プログラムの開発を重ねていくことができるでしょう.一度このような学習テーマに関するマニュアル作成作業を経験してしまえば,将来取りくむ新たなテーマのマニュアルづくりは,より簡単により早く進められるようになるでしょう.

7月のワークショップで議論される3つの学習テーマをどれにするかは,いくつかの要因に左右されます.要因としては,参加する団体やそのメンバーの要望や関心事,ファシリテーターの専門分野と提言,そして助成金に関連した諸条件などです.しかしながら,最初に取り上げる3つの学習テーマとしては,必然的に以下のようになると思います.

・ 組織化に関する基礎的スキル
・ 団体交渉に関する基礎的スキル
・ 資金調達と会員保持のためのスキル

このたびは,一度で理解するには多すぎる情報を,提供してしまったかもしれません.追って,次のメッセージをお送りしますが,そこでは7月に開かれる第2回ワークショップの議題要項をお知らせし,手順についても説明させていただきます.また,第2回ワークショップの準備のために,私たちに何ができるのかについても,提案させていただきたいと思っております.

アン・ウォルシュ
Anne Walsh
2005年2月
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